図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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(2014.02.15 儀式場跡地にて。直後寝込んだ時期に受け取った私書などを元にした、後日談集その1。)
――わらわれている。
『――――』
囁き。叫び。
締め付けられるような息苦しい感覚。
凍りついてしまうような寒さ。
真っ黒で真っ赤でいろんなものがぐちゃぐちゃで、
けれど、どこからか仄かに感じる温もりで、それらは消えてなくなった。
その繰り返しだった。
――わらわれている。
『――――』
囁き。叫び。
締め付けられるような息苦しい感覚。
凍りついてしまうような寒さ。
真っ黒で真っ赤でいろんなものがぐちゃぐちゃで、
けれど、どこからか仄かに感じる温もりで、それらは消えてなくなった。
その繰り返しだった。
目が覚めた。
嗚呼、夢だ。夢、だったんだと、気付く。あの夜の直後にも見た気がする、夢。
見渡す、自分の部屋。そうだ、ちゃんと帰ってこられたのだった。扉を開いたら、確かに、彼はそこにいて、
「ァ、ィ……」
……今は、いない。
真っ先に探した姿はどこにも。乾ききった喉は、名を呼ぶ事すらままならない。
今日は、何日だったか。壁に掛けられたカレンダーを遠目に見ただけでは、わからなかった。
ただ、周囲が明るい事はわかる。今が昼間なんだとは。少なくとも、あれから一晩は経っているようだった。
彼がいない事に一抹の不安感を覚えるけれど、…今はきっと出かけているのだろう。そう、思って。
「…、」
そうだ。彼はちゃんと、食事を摂っているだろうか。
意外と身体は楽に起こせた。身を起こして初めて、その服装にも気が付く。
血の染み込んだそれではなく。綺麗な寝間着。
着替えさせてくれたのか。そもそも、自分でベッドに倒れ込んだ記憶もない。ならば、やはり彼が。 自然、眉は下がる。
嗚呼、尚更。食事を作ってやらねば。
ベッドから動こうと全身を動かした途端、楽だと思った身体は急に重苦しくなる。
それでも、のそり、のそり、とゆっくりででもベッドから降りた。
立ち上がったら、ひどくふらつく足元。…不思議と痛みはもう、あまり感じないのだが。力が、入らない。
そんな時、ドアポストに何かが投函された音。それが詰め所に送られてきたもので、代わりに直接同僚が部屋まで届けてくれたのだとは知らぬまま。
手紙かな――誰からだろう。ぼんやりとした頭と身体が、ふらふらと扉まで向かって、その一通を手に取った。
「………… …!」
綴られた一文。そして、最後の、差出人の名前。
力ない瞳が、見開かれて。
刹那、がくんと膝が崩れた。
「っ――」
呟く声は酷く掠れすぎて、最早音になっていなかった。
ズキリ、と頭痛。激しい目眩。 手紙を手にしたままの右手が頭を抑える。
…ああ、もう、
「… … 」
脆い自身の体調に苛立つも束の間、意識がぼやけはじめる。
そのうち行かねば――それよりまずは彼の夕飯を――
そう思っても、身体が言う事を聞かない。
床を這うようにしながら、ベッドまで。この一連の動作ですら、体力を奪われている気がする。引き摺れば、衣服の下の足も擦られて、傷が痛む。
何とか辿り着けば、吸い込まれるように、
……また、眠りに落ちる。
*
19日、早朝。
付きっきりで居てくれている彼はきっと、寝ているかもしれない時間帯、だっただろうか。
「ッ――!」
フッ、といきなり目が覚めた。
また、わるい、ゆめだ。肌が汗でひどく湿っているのがわかる。
はぁっ、と息を吐き出す。その場から動く事もしないまま、また、瞼が重たくなって、いくが――
「――……?」
マジカルレターが一通、現れた。新しい、手紙だ。また昨日の? 否、別の人からだろうか?
顔の上に落ちたそれを右手がゆっくりとした動きで摘んで拾う。…何故だか、今すぐにでも読まないといけない気がして。
もう意識もぼやぼやとした中で、開いてみた。
「…………ぇ」
差出人は良く知った相手で、彼もちゃんと当日話をしには行ってくれたらしくて、そこは安心したが、
告げられる内容。昨日以上に、緑眼が揺れた。動揺した。
「な、…」
なんで。
「っそ……」
そんな。うそだろ?
あいつが――?
なんで。なんでなんでなんで
それじゃあ、オレは、
そ、んな……
オレは、
オレは、……つまり……
『――――』
夢の中の声が脳裏に轟く。
「……ッ……」
震えた。泣きそうになった。息苦しくなった。
けれど、けれど……じゃあ、それなら、そうだ、早く
レターは寝間着のポケットの中に押し込んだ。彼に見つからないように。
頭が痛い。
吐くものもないはずなのに、吐き気がする。
それらから逃げるように、布団を被った。
今の自分なら――意識なんて、簡単に落とせてしまうのだから。
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