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図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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(2014.02.15 儀式場跡地にて。直後寝込んだ時期に受け取った私書などを元にした、後日談集その2。)

 彼が外出等でか不在の時を見計らうかのように転送されて現れた一通の手紙。
 ポスンッ、と顔に落ちた。

「…ぅ…!?」

 瞼に直撃した途端、パッと自動的に開かれる。
 びくっと全身が短く揺れた。

「……」

 手紙が落ちてきて目を覚ます程には、眠りも浅くはなってきているらしい。 少しずつでも回復してきている証拠か。
 けれども動く気は起きず、身を起こす事はやはりしないまま。右手がそろりそろり、緩慢に顔の上のそれを取り、開く。
 …どうやら続きの手紙のようだ。

「……、……」

 書かれている詳細。昨日自分が若干の思い違いをしていた事を知るけれども。
 動揺だとか驚きよりも先、霞んだ意識の中に、ゾワリ、と躊躇いもせず疼くモノ。

 ああ、そうなんだ。そうだったのか。そうか。そうか。
 結局、やっぱり、そういうヤツらしい。
 へぇ。
 あいつは
 じゃあ、――――良かったじゃん。

 安堵。悪い方向の、安堵。醜い安堵。
 だって、そいつをそのままにしてたらきっと彼はその通り
 なら。
 結果的に――――良かったじゃん。 ――――ってさ。なァ?

 口端が微かに上がる。
 歪む口元。
 歪んで、薄ら笑って、

 …………、
 不意にその時、
 手紙を持つ自分の右手が、真っ赤に染められた気がした。

「っ」

 ハ、と我に返る。手紙がぽと、と手放されて。
 歪んだ口元は消え失せ、忽ち弱々しく沈み込む瞳の色。

「……」

 『――――』  …やっぱり、そういう事? あまりにも何度も反復されるあの言葉。
 全身の傷口が、ギシギシと痛みつけられる感覚。幻覚。幻触。
 表情が、歪んだ。

 表面の事実だけ見れば一時的にでも彼を   くれた人でもある。だから自分は昨日…… 否。
 そんな後悔、…よりもやっぱり大きいのは。
 抑えが効かないんだ。抑えようともしないんだ。どす黒くて醜いソレを。これじゃまるで昔の――
 
 憎悪。殺意。安堵。開き直り。醜悪。罪悪感。自責。自嘲。
 混濁する感情。
 どうにかしないと。どうにかしないと。
 また昔のように成り果ててしまう。

 拾い上げた手紙。最後の文面にはどこか、救われた気持ちになる。
 そうだ、本当に見失ってしまう前に、
 動けるようになったら、いつか、
 湯治に行こう。花水晶にも行こう。彼らに、話をしよう。
 このまま抱え込んでいたら、それこそ……壊されかねないから。
 まだ、自分が自分で居られているうちに。
 今は、まだ、筆を取れそうにないが。
 そして――――にも、行かなければ。

 ああ、でも、なぁ。
 彼にはどう。 どちらにしたって……やはり、合わせる顔が、ない。今は、見当たらない、彼。
 起きた時はいつもそんな感じでタイミングが悪いけれど。――見計らって送られてきているのものもあるとは知らぬまま――

 自分はとても、"わかりやすい"らしいから。
 複雑に存在する感情もすぐ顕著になる表情もなんて厄介なのだろう?

 ……手紙はまた、隠すようにポケットにしまって。
 こういう時に襲い来る睡魔というものには、正直感謝したい。
 悪い夢も沢山、見るというのに。それでも、眠ってしまいたいと思う。

 目を閉じる。



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