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図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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(「2014.01.11 , "12" , 13 , 17 , "18" , 19 ...」のその続編に当たる独白集…というより当時精神不安定だった本人が見た夢の中のお話。比喩表現たっぷり。)


(眠れない日々の、ほんの僅かな浅い転寝の時間の事。…いつ、見たっけ? 思い出せない。)

目の前には真っ直ぐ伸びる一本道。ずっとずっと続いている、先の見えない一本道。
すぐに悟った。自分の通れる道はそこしかないのだと。さぁ、進もう?

走る。
目の前に降りかかる靄で視界が悪くなる。
それでも道は真っ直ぐに一本しかない。
霞む中でも変わらず照らしてくれる星明かりがある。
明かりに従え。ただ、そこを進めば良い。進み続ければ良い。

だけど、ふとした瞬間に、転んだ。
思ったよりも、痛かった。痛くて、痛くて痛くて、涙が溢れた。
転ぶのって、こんなに痛いものだっただろうか?
起き上がろうとしても、すぐに転げ落ちて、
苦しくて悔しくて泣いて喚いた。

そんな時だった。優しい光が空から差し込んできて、あたたかくなった。
その光に縋るように、手を伸ばす。
すう、と痛みが引いた。涙も乾いた。

そうしてやっと立ち上がれても、身体中が痛い。
何故だろう。続きの一歩を踏み出せない。そうか、まだ足が痛いんだ。

履いている靴が窮屈だ。
どうやら靴擦れが酷そうだ。取り替えてしまおうか?
靴を引っ張った。痛いから早く脱いでしまおう。なのに。
嗚呼、窮屈すぎて脱げない。脱ぎたくても、脱げない。
自分の足にぴったりと嵌まった、走る為の靴。
脱ぎたくても脱げない。別の靴に取り替えてしまいたいのに、まず、脱げない。

もうどうしようもない。
痛いからいっそ足ごと切り落とそうかとも思った。だけど、切り落としたらこの道は進めなくなる。そしてもっと痛くなるかもしれない。
この窮屈な靴のまま、走り続けなければならないようだ。

ふらつく足に「痛くない」といっぱい言い聞かせて、無理矢理打ち消して、
地を蹴った。

――――そんな事を、繰り返し、繰り返して、どれほど道は進んだだろうか?


また転んだ。
当たりどころが悪かったのかな? 今度は、とてつもなく痛かった。痛くてたまらなくて、
血が止まらなくて、幾ら止血しようとしても溢れてしまう。
息苦しく悶えて、震えて。
このままじゃ、いけない。早く立ち上がらなきゃ。進まなきゃ。
なのに、息苦しさが、痛みが、邪魔をする。
心臓の音がうるさい。呼吸が上手くいかない。寒い。寒い。
強く激しい恐怖が、この身体を止める。
ダメだ。進まないと、それこそ、もっと恐い事が待っている。
だから、 だから、
動いて。
動いてよ。

顔だけを何とか持ち上げてみれば、まだまだ道は続いていた。黒く暗い、靄のかかる道。霞んだ通り道。

見上げた空の
星明かりが、揺らいだ。


――――


揺らぐ星明かりを眺めていたら。
刹那、細い、光がひとつ。差し込む。
まるで陽の光のような温かさ。白昼の空に浮かぶ、太陽のような。
一瞬しかなかったそれ。だけど、ひどく寒かった身体が、少し、あたたかくなった。
流れた涙も、あたたかかった。
締め付けていた窮屈な靴が、ほんの少しだけ緩んだような気がした。


――――


自分の前を進む一人の姿が目に浮かんだ。
その背中を追いかけるわけではない。だって、進む道は違うから。
けれど、嗚呼、自分は先に進んでいった友人との、"約束"の為にも、
まだこの道を進もうとしているんだ。そうだ。そうなんだよ。
なんたって、道の明確な基盤を作ってくれたのはあいつのその――
引き返すのは許されない。己が許さない。
幾ら痛くたって苦しくたって、走り方が甘いと言われようが、だからって、止まってはいけないんだ。
自分の走れる道は此処だけなのだから。
その場に適した靴を。上手い走り方を。本来は使い分けるべきなんだ。
じゃなきゃ、出来るものも出来ないのだと、知る。この通り道を敷いてくれた人の「臨機応変」という言葉が脳裏を過ぎる。

なぁ、進もうよ。
どうやって?

星明かりが、明滅する。
ピタリと嵌まったままの一足の靴はまだまだ、縛り付ける。


――――


(以前より、長い気がした、夢。甘くて優しい、あたたかな香りが、辺りを包んでいた。)

臆病者でもいいんだ。
泣き虫でもいいんだ。
弱くたって、恐がりであっても、
立ち止まらなければ、それでいいんだ。
これが自分だ。
どんなに無様に泣いていたって、否定されない。
ありのままの自分を、見てくれる。そんな人達の為にも。
恐いから、進む。
恐れがなければ、それはそれで恐ろしいことなんだ。
それで、いいんだ。
このままで、いいんだよ。
止まらなければ、いい。

これが自分。
これがオレ。

今までにも、今でも、この地に足をつけていられるのは、彼の御陰。
彼は、十分、とても、頼りで、決して弱くなんかない。自分よりも、ずっと強い。何度だって、自分を救ってくれた。
だけど、恐いものは、恐い。
きっと、彼が居なくなる瞬間 それが
"オレ"が"オレ"でなくなる瞬間だから
きっと、今までの地もこれからの道も崩れてしまって、
全て、壊れちゃうだろうから
考えたくないよ
こわいよ
過去の記憶も感情も消えてくれない
今もこの気持ちは消えないけれど
それでも いいなら

だけど

だから、――止まるな。

大丈夫。……大丈夫。
彼は居る。
誰も憎くなんてない。
まだ、オレは、オレで居られている。

ねぇ、そろそろ、立とうよ?
「動く準備」。

でも、もう少しだけ、…もう少しだけ、この傷だらけの足を休めていてもいいかな?

星明かりに微笑んでみた。
上手く、笑えてるかな?
まだ、涙でぐしゃぐしゃかな? ぎこちないかな?
望まれている、笑顔。
靴は、締め付けられたり、緩まったり、そんな繰り返しだったんだ。


――――


立ち上がる。

傷跡だらけの、身体。
拳を握り締めた。

目の前には、靄のかかる一本道。
この足には、きついのか緩いのかわからない靴。
星明かりは、変わらず空で輝いていた。

強くなりたいと思った。
弱いままなんて、やっぱり嫌だと思った。

どんなに泥や血にまみれたって。
泣きたくなったって足が痛くてたまらなくなったって。
前が見えなくたって。
それでも。それでも。

進んでいきたいんだ。


なぁ、サリア

オレが楽しい事も悲しい事も分け合える人なら、

――――強さを分け合う事も、できるかな?

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