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図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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(2013.10.12 悪魔の遊戯イベント、裏通りにて。当時の戦闘時の心境の細かい描写。)

 アンデットの心臓を貫いた時だ。
 そう、"殺した"時だ。既に死人であろうが、確かに心臓にまで剣の刃が入り込んで、"殺した"のだ。
 全身に迸るような、精神の奥底を揺さぶられて、ふるわされる感覚。


 かつての過去の感覚。感情。感触。
 相手に死を与えた、という事に
 湧き上がりそうになった、  。

「……っ、ぁ」

 自分自身のそれに戸惑いと一瞬だけ大きな激しい動揺。見開かれて、揺れる緑眼。

 恐くなった。
 裏通りに蔓延るそのアンデットは普通に斬っても蘇るだけ。心臓を貫く事でしか、退治出来ない。そう聞くなり――躊躇もなく、殺った。自分自身が。
 殺意の在処は、自分でもわからない。相手は、見ず知らずの死人で、最早魔物だから。特にこれといった感情も無く、仕事として、退治せんとしたまで、の、はず。
 けれど、何故だろう。あれはもうとっくに、屍だというのに。動く屍でしかないというのに。
 恐くなった。

 だから、
 無理にでも、  という感情は、抑圧され、圧殺され、押し込められる。
 アンデットによって左肩に受けたダメージ、そこから赤い血を止めどなく垂れ流したまま、やがて、屍が消失してゆくのを見下ろしながら、
 反動なのか否か。ふっと、力が抜けた。

「……や、った、か…………」

――殺ったんだ。

――オレはもう、殺す事さえも、恐くなってしまっているのか。


 ……次いで、共に戦った同僚の声が投げかけられるまでは。真っ当な言葉も出せず、ただ、息が吐かれるばかりで。



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