忍者ブログ
図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

9/28

朝、出勤すればヨハンから伝言だって受付のヤツから。
どうやら昨日、オレが帰った後に伺っていたようだ。
「車椅子の彼」 きっと、あいつが向き合う日、祓う日が決まったのだろうと思っていたの、だけど。


渡された手紙と紅い結晶。
カルから。
死んだ、って
逃げでもなんでもなく、本当に あいつは
嘘、でも、狂言、でも、ない。
確かに。カルは。 もう身体も、消えて、残っていないようだけど。
現場は、森の中。
触れた結晶から流れてきた最期の記憶は、
悲痛だった。痛かった。赤かった。冷たかった。
でも……穏やかだった。

一人を守り抜いて、死んでいった。人を殺した事もある、賞金首の、あいつは。
償わずに、終わってしまった。
償いたいと願ったカルは、全て、終わってしまった。
…………オレが、あの倉庫街で拘束しなかったから? あそこで魔封じはせずに連れて行っていれば、こんな事にはならなかった?

この甘さで、命の危険に晒されて、或いは、死んでしまった、人達がいる。

けど――あいつが、カルが、あの場にいたからこそ、救われた人がいる。
そう思ったら、どこか自分も救われたような気持ちになる。自分が、だ。勝手だ。凄く自己中な感情だ。

本当に

アイズもヨハンもカルも
温かすぎる。
優しすぎる。
そんなところがあったって良いとか、正しかったとか、会えて良かったとか、
肯定、しないでよ  いっそ否定してくれよ
…そう思ったのに

結局、その優しさに、甘えてしまったのか

泣いてしまった

何でオレが泣くんだ。
抑えられなくなってしまった。優しさに甘えてしまった
なんて、
なんて、甘いのだろう。

オレがオレでなくなってしまうような、そんな風に変える気は勿論ない。
だけど、いつまでもこのままじゃいけない気がするんだ。自分にも他人にも甘ったるいままでは。すぐに揺れ動いちゃうような不安定なままでは。

まだまだ考える必要がある。明確な答えが見えていないから。けど、立ち止まっていてもダメだから。
進みながら考えていくしかない。
アイズにも時間ある時に、話しなきゃ。あんな顔も、……もう、見せたくないな。


――――
カル、お前は、幸せだったのか?
光った結晶に触れてみたら、今度はとても温かった。
霊園にいた、あのゾンビはカルのだったんだな。
楽しそうで嬉しそうで

あいつも独りでは、なかったんだろう。
それは確かだと思う。

下着泥棒の事は、忘れてほしいけど。忘れてほしいけど…!  あいつのその記憶を見たヨハンにオレの下着の色とか知られたけど…!!
それでも、思わず、笑ってしまった。久々にまともに笑ったような、気がする。

カルの手紙と結晶はしかと受け取った。
提出したから、後は向こうの判断というか処理待ちというか。
自警の色んな奴等に下着泥棒事件の一部始終まで見られる事になりそうだが、そこはもう腹括る。

やっぱり、生きて、償って欲しかったん、だけどな。

今は、悪魔の奴隷だろう、みたいな事が手紙には書いてあった。
今は……幸せ、なのか?
もしかして、まだ、全ては、終わって、ないのか?
気にかかる。


【ヨハン、紅い結晶】

PR
240  221  97  96  95  94  93  92  91  90  89 
忍者ブログ [PR]