図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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「――これを囚人ルシファーのとこに差し入れてくれないか? あァ、そう、真っ白な翼が生えたヤツな」
自警団詰め所のカウンターの隅に、ラララルラ土産の『美味しい水(花火大会特別容器仕様)』を置きながら、
囚人担当の団員の一人と言葉を交わすのは当の水神竜の里・青の海花火大会から帰ってきたばかりの黒竜自警団員。
相手の団員は訝しげな顔をして黒竜を見る。何故お前が、と言いたげにしているのを感じれば、
「あっ、誤解すんなよ。これはノルンってヤツからだ。オレは依頼として頼まれただけで。あくまでもノルンからの差し入れだって伝えといてくれ。オレから、なんて聞いたら気持ち悪がられそうだし?」
なんて、囚人の彼は自身の事を覚えているかもわからないのにそんな事を冗談混じりに言って軽く笑う。
ひとまず団員に押し付けるように渡す。団員が何か言うまでもなく、黒竜は持ち場へ戻る為に背を向け
「じゃ、頼んだぜ」と手をひらり降ってカウンターから離れて。
――これでまもなくルシファーの牢の元へ、ノルンからの差し入れとして美味しい水の飲料が届くだろうか。
受け取るも受け取らぬも、それをどうするかも、彼本人次第だろうが。
任務は一つ、完了だ。あとはまた折りを見て、例の黒の山へ向かうだけ。
アキトの紹介してくれたラララルラ行きの商隊と自身のスケジュールもまた照らし合わさねばと片隅で考えつつ、
ひとまず今日はまたいつも通りの業務を。壁に立て掛けておいた箒を取って、
……また脳裏に描く白い翼。舞う純白の羽根。ソレはまるで天使のような――。
「……」
それは僅か二、三度だけの邂逅だった。それでも、忘れられない姿。忘れられない、色。
歩きながら思い返しては、緑眼がス、と細まる。
「……堕天使、ねェ……」
小さく呟きを零してから、詰め所の扉を開けた。
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