図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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街のとある一画。清掃員の服装として、エプロンを纏い、角を避けてすっぽり収まるように頭に巻いた三角巾姿の、アルバイト中の黒竜がいた。
――その下はこの後すぐに自警団詰め所へ出勤出来るように、いつも制服のアンダーに着込んでいるシャツとズボン、ロングブーツの格好ではあるが。
あともう少しで副業の清掃業務が全て完了する。
日も昇り、辺りもすっかり白んで空も青くなり、今日も今日とてジリジリとした真夏の光が差し込んでくるといった、そんな頃に――
――その下はこの後すぐに自警団詰め所へ出勤出来るように、いつも制服のアンダーに着込んでいるシャツとズボン、ロングブーツの格好ではあるが。
あともう少しで副業の清掃業務が全て完了する。
日も昇り、辺りもすっかり白んで空も青くなり、今日も今日とてジリジリとした真夏の光が差し込んでくるといった、そんな頃に――
「Σッ、だ――!?」
突如、脛に走る激痛と衝撃。不意打ち攻撃に思いっきりもんどり打ってすっ転んだ。
「あ゛ッ、づ……」
箒を勢い良く落とし、衝撃をモロに喰らった片足を抑えて悶え転がっていたが、
……ふと傍に、一匹のモモンガが見えて。それは見覚えのある小さな姿。
「あ……お前、ノルンの、ところの……?」
以前は強風に煽られて角に引っかかってきたのを思い出しつつ、薄っすら涙目な緑眼がパチパチ瞬いて。
――痛みが落ち着き出したところで身体を起こし、モモンガの背負っているボトルメールを受け取る。
「もう大丈夫だぜ、ありがと」なんて言って、モモンガを撫でてから送り出して。
改めてそのボトルを見てみれば、それには珠状のラピスラズリの蓋がされており、片手に収まる程の小さな物。ではあるが、装飾が凝っているのが伺える。
所謂香水瓶のような意匠らしいが、黒竜にそんな知識はなく。
また、見た目以上に入る容量拡張魔法も施されているらしいが、当然獣人にはそれを悟る術もなく。
ひとまず手紙を開いて、読む。
手紙の内容に大体の察しは付いている。
デザートベインの一件も解決し、ペティットに帰ってきたあと彼女に書いて送った、あのクロークの仕立て依頼の報酬に関する返信だろう。
「――えーと…… ……。 ……え゛…… えっ!? ひゃっ、ひゃくま――!?」
飛び込んできた冒頭の請求金額に一瞬全身が跳ねて驚きかけたが、どうやらそれは嘘だったらしい。ほっと肩の力を抜き、続きに目を通した。
自分自身、報酬には現金或いは代わりに何がしかの依頼請負、とは書いたが――今回、現金ではなくその依頼請負の方らしい。
「……」
手にしているボトルを見遣る。それからまたじーっと文面を見つめ。
「水神竜の、里……? 黒の山……って、どこだ……?」
まずはそこからだった。首を傾げる。まずは情報収集、聞き込みの必要がありそうだと考えつつ、更に目を落としていく。文面の終わりまで。
「……、…………」
……そうして、
やがて読み終わったあとに、
「――――……。…………結局、あいつの取り調べの申請、上手く通ってないんだっけかァ……」
最後に洩れたのは、そんな呟き。
青く染まった朝の空を見上げて、朧げに浮かぶ白の雲を緑眼に映して。脳裏を描いたのは、かつて黒の翼を持っていた自分とは正反対の、白の翼の――。
それからまもなくして立ち上がれば、ズキッと足が痛んだ。さっきのモモンガダメージだ。イテッ、と表情が歪みつつも、ボトルと手紙をしまい、箒を持って。
「っと、さーて。あとは向こうの角をやんなきゃか……」
残りの業務に勤しみに行く。
これが終わったらまた、夕方まで自警団の本業だ。
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