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図書館、資料館に書き溜めてきた日記やSS(小説)を保管するところ。
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9/16

15日、昼間中にドラゴン便でペティットへ帰還。
荷物の整理も兼ねて一度寄宿舎に戻ってみれば、菫色の手紙が一通、ポストに。ジルからだった。オレが街を出た直後辺りに届いていたようだ。
どうやら、今月初めにブラッドの親父さんが退院して、ジルも学院に通い始めたらしい。
新しい友人もすぐに出来たって、楽しそうな様子が、伺えた。 …良かった。このまま、大きな事もなく幸せにやってくれたら嬉しいな。
けれど。
その日の夕方、商店街で騒ぎ。塔が崩れたとか、襲撃者が何人もいたとか、怪我人が出たとか、…殉職者が出た、とか、
まだ、帰ってきたばかり。街を離れている間でなかったけれど、リヴォの事件と重なる。
オレは、商店街の端の方で。逃げる人を避難させたり、或いは道を作る為に瓦礫をどかしたり、……渦中で何が行われていたかは、良く見えなかったし、知らない。
商店街の一画がめちゃくちゃだ。
今日は、復旧工事の手伝いを。

何人、傷ついて、死んだんだろう?
事件が起こる度に、誰かが、死ぬ。住民、或いは、同じ自警団員、殉職、だ。
次、またどこかで事件が起きた時、自警団員の誰かも死ぬのだろうか。捜査で、襲撃で、何かで、
誰が? 我が身か、それとも、、
考えるだけで   息が 出来なくなりそうだ
だから 考えてはいけない

死を近くに感じるまま、夜、行ってみたヤドリ樹。
死者の魂が、光となって舞っているとも、聞く。本当かはわからない話だけれど。
まだ新しそうな菊の花束も、根元に供えられていた。
飛ぶ光は、何て綺麗なんだろうか。
死ぬ事は、冷たくて、遠くて、恐ろしくて、恐くて、恐い、事なのに。
手を伸ばせば、触れられるんだ、魂かもしれない光には。
けれど、逝った人の肌には、二度と触れられないんだ。
あの子も、いるのかな。何となく、そう思ってしまう。
語りかけてしまうんだ。居るかもわからないのに。魂かもわからないのに。

後ろから声がした。
早い。それも一気に。捲し立てるような言葉。まるで作られたような中性的な声。
振り返れば、真っ黒な 赤い目と
一発で、解った。
「マーシレス」。
こんなところでご対面出来るとは。しかし、捕まえるには、都合が、悪かった。
何て、戦いづらい場所なのだろうか。死者の眠る場所の、手前は。
死後の世界について、魂の行き場所、未練。
死んだらどうなるかわからないから、恐い。全て終わるんだろうとすら、思う。
あの子に、未練は、ないんだ。でも、たまに少し寂しくなる。寂しさは、未練の内に、入らないよな? 誰だって、ふと亡くなってしまった人の事、想う、だろ?
だから光に語りかけてしまう。けれど、マーシレスの仮定ならば、あの子はこの世に縛られているという事になってしまう。そう考えると、罪悪感。いや、そもそも、これは仮定の話。本当の事は死ななきゃわからない。
しかし、とても口が早い。聞き取るのに精一杯。
どれこれも、情報の通りのヤツだった、そいつは。
オレの事も知っていた。普通に、最初、名前を呼ばれた。
情報はどれほど持ってるのか計ろうとすれば、アイズとイチャイチャしてるとかそんなのが出てきたが――気になるのは、オレとアイズの間の事で暴露出来るものを2つ握っている、という事だ。一体……何を掴んでる? いや、実際には何もなくて、ハッタリの類、かもわからないが。
本当に何か握っているならば、口止め料でも奪いたいところだが。わりとマジで。
ヤツは、今回、少し、機嫌が良くないらしい。
正義だとか悪だとかが何かと問われても、オレは曖昧なものしか答えられない。わからないよ。未だに。なんたって、人によって違うから。オレには定められない。
定めたのは、「道」であって。その道は、対話、だ。話が出来るヤツで良かったよ。

確かに、生死問わずの賞金首を冒険者でも賞金稼ぎでも殺したって罪にはならない。金が、渡される。
だが、そうだな。マーシレスや、他の別の犯罪者が賞金首を殺したら、どうなるか? きっと賞金は渡されないのだろう。
言われてみれば考えさせられる。難しい問題だ。罪の境界線。殺したら罪になるもの、殺しても罪にならないもの。
それは時に殺す人の身分で、殺される人の身分で、変わる。

ノキエルが、ヤドリ樹に現れた。突然短剣を投げてくる。
この場所でのドンパチは、あまりやりたくない。
マーシレスとは知り合いっぽかった。
ヤツも、マーシレスの情報を持っている? 二つ三つ。
一つ目は「マーシレスの黒づくめ服の下はパンツ一丁」…………絶対おかしい。この情報はいらねェ。捜査の足しにならねェ。
そしたらマーシレスが「事実だ」ってフツーに肯定した。何でそんなナチュラルに!!
ついでに突如耳元から「脱がしてパンツ姿写真に収めてこい」という謎のお告げも来たんだけどあれは何だったんだろうね!!? 聞き覚えのある声な気もしなくもない。もしかしなくともアズじゃねェのあの声…。
一体なんだったんだ。あれは幻聴なのか。けどマーシレスにも聞こえてたぞ。白地に青のストライプ柄とか言ってた。だから何で柄まで普通に答えるの!?
何でこんなやりとりをしなければならなかったのかよくわからない。

もうその話は置いておこう。
二人の空気は、段々殺伐としてくる。
このままではマーシレスにノキエルを殺られかねない気がした。だから、先手を打ってこちらが先にノキエルを捕らえようとしたが、失敗に終わる。そも、取引の話を出されていた、ところ。あそこで動きを止めて正解だったのか、否か。

ノキエルが持ちかけた取引の話は、驚くしかないものだった。
協力してやってもいいかもしれない、なんて言うのだ。ヤツは。
依頼が来るかもしれない? 何の? それはわからなかったが。
情報収集をしたいのは向こうも、らしい。知らないまま挑んでは、あっという間に殺されるだろうから。そんな。
見逃せとは言わない。要求は、自分にも情報収集させろ。それだけ。共闘もOK。マーシレスの件の間は、殺しを行わない。終わった後は、捕まえるなりしたって構わない。
ここまで来て、ノキエルに利益…メリットは? 疑問も、ある。
そもそも、信頼要素が足りない。
ルインの方がまだ信頼できるような気がするのは、何故だろうか。ほんのたまに、心配してくれる、というか……励ましてくれる事も、あった、から? 本人がそのつもりで言った言葉だったかは知らない。だけど、オレは、そう感じた。
信頼しかねる、と言えば、ノキエルはまずは一週間騒ぎを起こさないと約束した。その後に手紙をよこす、と。
……さぁ、騒ぎが起きなかったとしても、裏で見つからないように殺人を起こす事も容易だろう。やはりまだ信頼しかねるところ。
隊長に相談する内容が、増えたな。

砂で目をくらまして、逃げ出したノキエルにマーシレスが、一度に沢山のナイフを投げた。あれだけの量を一度にだ。やはり、本気でやり合えば、相当な力を持っているのが予測できる。
本当に、良く喋る野郎だ。情報をホイホイと出してくれる。整理しきれない。そして、ヤツは自分の怪我の事までベラベラと話す。平気で弱みを晒しているようにも見えて、だけど、それが弱みでないかのように常に明るく飄々としている風にも感じる。そういうのが、一番恐ろしい気もする。
だけれどもだ。オレらが、仕掛けても、ヤツは迎撃して逃げるだけ。本気で殺す気もないらしい。ならば好都合。と、思ったが。

近距離戦の実力。
遠距離はこの目でも、確認出来た。雨の中、夜の中、視認しづらい、ナイフ。
戦って、初めて解る、っていうのは、主に戦術とかの戦闘能力だと思う。

けれども、結局。
剣は抜いたけれど、振るいは、しなかった。
場所が、ヤドリ樹――魂が、眠る場所だから?
捕まえなければいけない相手から退くにも退けない、撤退する気もないだろうという見透かされたような事を言われたから?
死者を弔う前で、争いたくなかったから?
あの子が――居ると思ったから?
ああ、何だったんだろうか。
でも、次は、次は
ヤドリ樹でなければ、全力で、捕まえに行ける気がする。

全部、言い訳か?

でも。捕まえない選択肢は、ないから。それだけは確かなんだよ。


――――――


「必要悪」は、マーシレスが定めたこの街でのルール。それを縛るものが、一つだけ。それがなくなった瞬間に無差別に殺す事も出来る。
「再配分」は、街の為も考えて行っているもの。
自警は再配分要素ではない?=殺さない?
何も生み出さない者、社会的に無意味な者を良く殺す。引き込まれても文句の言えない場所にいる者は、対象内。配分については別。
犯罪者も殺すが、一般の市民すらも、対象になる事が、ある…?
「悪」の定義、皆が思うものと同義でいて、それから外れていて、中間である。
悪を根絶やしにしたい気持ちは確からしい。その理由は、点数稼ぎと関係がある?
点数稼ぎの先にあるものは、答えたくない。
みんな死んでしまったというのは、仲間が? 自分自身が全てを終わらせる……の、意味は。 いまいち、理解に及ばなかった。
レッドポイント達は、作り出したもの。武器。道具。 マーシレスが、彼らを統括?

マーシレス=自警団員かもしれない、というこちら側の推測を、マーシレス自身が知っていた。

2mの尾にナイフが何本もぶら下がっていた。マーシレスの発言からするに、計25本。
ルインの言っていた「スカートのようなもの」と同じもの?
機械的な、まるでからくりのような柄のある何かを、所持。「ギギザザの忘れ形見」と本人は言っていた。…もしかすれば、騒がしき剣?
ルインには薬指、セシリアには中指。ここ(ヤドリ樹?)では親指。

誰もが殺せる小さな犯罪者。

ノキエルと知り合い。いつもより喋りたくなくなったり(それでもかなり喋っていたが)、機嫌が良くなくなるくらいには嫌悪している様子。
同じく賞金首であるノキエルは、「再配分対象外」「再配分とは無関係」 だけど、殺したい相手。再配分とは別に殺す必要性が、ある。
「犯罪者に死を」「正義ではないのは確か」
自分自身を主張、したがっている? 気付かれたい? 知られたい? だけど、勝手に知られるのは嫌?
何かしら、見せたがったり残したがっていたりする印象。「指標」とも言っていた。

発言からするに、この街にはそれなりに滞在している…?


――――――


記憶から掘り起こして掘り起こしての、メモ。
わからねぇな。
一般人すらも殺すのなら、最早既に無差別殺人、通り魔にしか感じられなくなる。
それでも尚、ルールが存在するのか。目的が存在するのか。
何の為に。
再配分の基準と殺す基準は別にあって、 何だかもうぐちゃぐちゃだ。わからねぇ。

マーシレス。
もし自警団員だとするなら。
あの、詰め所の中に、普段は、いるのか? のうのうと?
本当にそうなら、そう思うと、想像すると、 悔しくてたまらない


【マーシレス、ノキエル、生霊(アズライト)】

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50年前のクロノドラの事件・・・宵闇の手フラネス
 5人で構成される殺人グループ。全身、漆黒の衣装。
 10日間で53人が殺害される。「屍の色の爪」と呼ばれる剣、一人の人間が人差し指、二人の獣人が親指と中指、二人のエルフが薬指と小指。
 心臓を一突き。血十字を死体の胸に描く。
 10日で解決するものの、剣は発見される事なく。 色を映さない、黒の呪いの剣。
 首謀者フラネスは影隠しの森で討伐? 死体確認されず。

100年前のクヴェールの事件・・・騒がしき剣のギギザザ
 女獣人、猟奇殺人鬼。裏商人と繋がりアリ。
 対立する商人を、改造武器で殺害。調査するにも、関係者は皆、解体殺人されていた。
 使用凶器は、裏商人の工房から押収された大型魔導機関剣? 無数の刃物をぶら下げるように所持。からくり剣。
 クヴェールにてギギザザを討伐した冒険者も、死亡。
 目撃例に共通していた「騒がしき剣」と形容される武器は発見されず。

関連性のあるかもしれない二つの事件。
一致するのは、人の五指の名がついた色を映さぬ剣。全身黒づくめ。騒がしき剣。無数の刃物。複数、組織での犯行。

マーシレスに加えて、確認された名は9人。
ウルナス、フラネス、ランドロック(熊獣人)、エルヴァラ、エピラス、オリエス、アイレス、イジアス、リギニア。「レッドポイント」。
ウルナスは17年前に作られた人造or改造人間?
フラネスと、中指を使うらしいエルヴァラは死亡? そうだとするならば、現在はマーシレス入れて8人。
アイレスとイジアスがクロノドラで何かを探している?
複数の共犯者、組織犯行。何らかの目的の可能性、快楽主義の線は薄い。
「点数稼ぎ」
名前が広まるのも、殺すのも、稼ぎになる。競う相手がいるかもしれないというコールの判断から。

「黒き海と紅き月に福音を」

10年前にいたという殺人集団、レッドポイント。しかし事件は解決したはず。
それが今も存在していた……?

殺す基準、ルール、「再配分」
対象内はルイン、ルインに味方する者。対象外はアズ、アイズ、セシリア、イザヨイ、恐らくマクナーリアも。
コールは不明…?
「悪を根絶やしにする」

目撃場所追加。
ヤドリ樹。
ウルナスがマーシレスに、黒い板を渡していた。
魔力ドレイン系アイテム。
ランドロックが使用していた。

中指=騒がしき剣、かは不明。
「薬指は使えない」
どう考えても、ヤツは獣人だろう。
そして、ひょうきんな喋り方。ノリが良い。話をするのは可能とみられる。
報告された武器は皆、2m辺りのリーチの長い武器。
ならば、近距離戦は…どうか?

アイズとアズの事を知っていた。内部しか知らないような細かい情報まで、相手の手の内。
恐らく、オレの事もヤツは知っている。
自警団員と、内通している者が?
或いは……自警団員?
もしかすれば、細かい情報は向こうがたまたま拾ったものなだけで、上手く活用したハッタリ?

自警組織が表だって動くと、相手に筒抜けの可能性。
外部協力者。
コール、イザヨイ、マクナーリア。近いうちマクナーリアに正式に要望。セシリアも連絡先がわかり次第、聴取も兼ねて。
マーシレス達に悟られずに、外から動かすのが主。
本当に内部の仕業の場合、内部調査の必要性もある。

「必要悪」の意味、「再配分」の意味。
悪の基準。殺す基準。
どこで、マーシレスは判断する?
疑問の解消の為。本人から新たに情報を得られるならば、尚。
どこかで、対話のチャンスがあれば。


――――――


9/13

コール、アズ、イザヨイからの。
この日だけでも、これだけの情報量。

出張。
到着した街は昼間でもとても暗い。夜になれば、ラクリモーサの言う通り、冷える。
向こうで外套を購入。
コールと会う為、アズと一緒に約束の場所へ。
「金の道」と呼ばれているらしい、高級な建物の並ぶ通り。
何だか、オレにはとても不釣合いだ。
その中の、上流喫茶店での待ち合わせ。店先にいたコールは、商人みたいな恰好をしていた。髪型も変えて、傷跡も消していた。礼していた動作も、それらしいように見える。
いつものコールっぽく感じなかったし、近くまで行かないと解らなかったから、遠くからなら別人にも見える気がするんだよな。
いとこのはとこの……ではなかったみたい。信じそうになったところを、突っ込まれてしまった。確かに、自警っていうのは時に人を疑わなければならない仕事ではあるけれど…!

服装的に制服は問題なし。けれど、テーブルマナーっつーの? そういうのは……  うん、オレには無理だ。
でも、見ないフリをしてくれるものらしい、店員は。それなら良かった。
飯も高級。出張とはいえ、経費で落とすには困難っぽそう。後からの申請にしても、この場の自腹はきつい…。
そしたらコールが奢ってくれた! 辛口大盛カレー!! マジありがとうっっ!!!
何かどこかでお礼出来れば良いんだが…!
でも……女は蹴らないで、男は蹴るのか。ちょっと納得行かない。

さておき、
本題は、コールとの情報交換。
コールが持ってきてくれた資料。100年前と50年前の事件、……殺し方が残酷で、恐ろしい、猟奇的な事件。クロノドラのなんて、10日で53人だ。こんなのって、あるかよ。
50年前ならばまだ生きている人間獣人とかいるかもしれないし、後は100年以上も生きられるエルフとか、誰かいれば当時を聞いてみたかったものだが。関係者は殺されていたり、行方不明だったり。望みは、薄い。
謎の多い事件、犯人は死んだとはいえ、動機は一切不明。実質迷宮入りに近いようにも見える。
ヤドリ樹で何があったのか。アズからも色々聞けた。
伝え石は置いてきたが、アズは何故そこまで警戒するのか。その理由は、後から解った。
――あの「マーシレス」が、同じ、自警?
信じられない話だった。もしかすれば、自警でないかもしれないし……内通者、かもしれない、し、可能性はまだまだ。
けれども。 最早、内部なのか、とすら思ってしまう。
それならば、誰だ?
解らない。 ただ、オレの周りは絶対違うって、言い切れる。そんな事、する人達じゃないから。
どうにも、オレらは大きくは動けなさそうだ。
正直、悔しい。どう捜査しようが、そいつらには伝わってしまうんだ。
だから、外部も取り入れるというアズの提案。捕縛の協力の要請。そして、また隊長とも方針の話し合いを近いうち。
セシリアの連絡先は、コール経由でお願いする。イザヨイの連絡先は仲介の人より手に入れた。マクナーリアは前に協力するって言ってくれたし、次会った時に今の状況の説明や幾つか情報も伝えられれば。
しかしながら、聞く限りじゃかなり強くて危険な相手だ、マーシレスは。慎重に、気を付けて、挑んだ方が良い。外部にお願いするにも、心配なところ、不安なところは、ある。
ともあれ、話は持ちかけるが。
身分隠して裏通りへの潜入……マーシレスがオレの事知っているなら、意味もない気がしてくるな。いっその事、オレもあれだけ変装してしまえば良いのかもしれない。
まぁ、逆に顔がはっきりしてる方がヤツが自警のオレと認識して……対象外として、襲い掛からないかもしれないけれど。その方が逆に好都合か?

しかしまぁ……あそこまでの量になっちまったな。情報は多くなってきた、が、見えない点も多すぎる。
ルインとの交渉で得た情報を幾つかを二人に。
あいつの提案の話は、今回しなかったけれども。それは今度隊長と話す時に、報告と一緒に。
丁度、店にイザヨイの仲介、というより使い魔かな? 狐……店内では女性に化けていた狐からも情報を得る。そして正式に協力する、とも。

 悪の基準が、気になって仕方がない。
どうして悪で括りたがるんだ? 括ろうとしている、のか? 再配分。何を配分? それの意味。

どうであれだ。
たとえ内部だろうが何だろうがわからなかろうが、立ち止まりたくはない。
立ち止まっては、進めなくなるから。
常に、動くんだ。前へ。

内部の調査、オレには向いてなさそう、って思うけれども。
確かに、外も内もこなせる自警は万能だよな。
期待には応えたいけど、きっと、みんなが思う程じゃない。
成長譚、だって。カッコイイ話じゃあ、ないけどさ。何なら、アズやコールの知らない一年前の事から……って、長くなるし、あんま捜査と関係ないなこれ。
誰であっても、話は出来るなら、する。通じても通じなくても、少しでも出来るなら。
明日の最終便で帰還。…まだまだ、忙しいな。
何だかコールも疲れてそうだったし、オレらもちゃんと休んでおかないと。


【コール、アズライト、貴族風の男女・金毛の狐】

9/12

先日、アズからコールと一緒にマーシレスについての情報交換をしようかって話をされて。やっぱり、あいつはマーシレスに会っていたようだ。
向こうにしか入手できていない情報もあるかもしれない。勿論、承諾を。
そしたら、今日、出張に行くぞって鞄を渡された。何でも、コールは遠くの街に行っているらしくて、直接その場に向かって会うって。
そして過去の事件の資料の確認にも。
場所は、暗い森の街・クロノドラ。

っつ事で、すぐに用意。荷物詰め込んで道具や着替え用意して…… と、していたら、裏庭への窓の方から声が聞こえた。
覗き込んでみると、ラクリモーサとアイズとレミ。ラクリモーサやレミとは、暫く話していなかった。
時間的にも少ししか出来なかったけれども、久しぶりに会話も。

レミはドレッドじゃなくて、元通りの髪になっていた。 …………ヅラだった。
ドレッドが! ヅラだった!! ヅラだったのか、あれは。ヅラ………………
髭もなかった。あれはレインに剃られたっぽい。 …いやまて。そもそも、何で髭なんて生えてたんだ……?
旦那とか嫁とかの話題。
そうだ、オレが旦那だ。……じゃなくて、嫁なんだとよ。何かもうその前には彼女とかお母さんだとかとも呼ばれたんだけど…!
ついには二人とも嫁って言われたぜ。嫁が、二人…?
コールの名前が出た途端、レミが悲鳴上げたからビビった。
レミの将来の嫁、らしい。コールは。 前はラクリモーサの事が好きだったんだよな? どうしてだろう。またそのうち聞いてみるか。

ラクリモーサもやっぱりマーシレスの事は聞いていたようだ。詰め所にいれば多少の情報は入ってくるだろうから。
リヴォの事も。あれは、中で起きたものだった、しな。
裏の情報を自分で知る事が出来ないのは、仕方ない、だろう。ここは表の位置、自警の詰め所。
クロノドラの方は夜が特に冷えるって情報をくれた。現地で、上着を一着購入しておこう。
またリヴォの事件のように詰め所で被害が出るような事がないようにしたい。詰め所内で起こる騒動に、影響が出るのは、中に居る団員や周辺住民だけではない。…囚人も。
何が起こるか予測が出来ない。あの事件自体、オレとアイズの旅行中に起きたものだ。
あいつを不安にさせるような事態にはしたくない。 だけれど……襲撃者は、突然、向こうからやってくる。
それを如何にして察知して、防ぐか、なんだろうが。

アイズにも出張の事をメモで伝えておこうかと思っていたところ。丁度良かった。直接口で伝える。
何だか顔色が悪かった。問題ない、とは言ってたけれど。
アズと一緒にマーシレスと出くわした、って話も聞くし、怪我もしたっつーし……それのせいなんだろうな。魔法使い過ぎたのかちょっと貧血気味なのか。どちらにせよ、治るまでゆっくりしてほしい。無茶をされちゃ嫌だ。
そういえば、街中でリーアを見るのは初めてだな。裏庭、日向ぼっこにも向いていそう。

あまりみんなと話し込める時間もなかった。すぐに出張だ。
帰ったら、また他愛のない話を出来れば良いな。アイズからは、マーシレスと遭遇した当時の事も聞いてみたいところだが。
さて、数日間離れる。遠方への出張はウンケイの墓……春先の桜花の国、以来。
クロノドラ――あそこも、初めて行く街だ。


【アイザック、ラクリモーサ、レミ】

目撃場所。
裏通り。瓦礫地区。闘技場。

・「悪党」と認識次第、問答無用かつ殺す気で襲い掛かる? 少なくとも、ルインの例はそうだった。
・全身、真っ黒。顔までも、黒い。顔は頭巾か何かで覆っている? 赤い目。わかりやすい格好。作られた、中性的な声。 身長170cmほど。猫背気味? 性別不明。 身体能力からして獣人の可能性大。
・跳躍力、バランス感覚、共に高い。
・「100年前」「必要悪」
・投げナイフ。スカートみたいなものにぶら下げていた。得意分野は遠距離の投擲? ナイフ付きスカートを回しての範囲は、2m。

・(十六夜)瓦礫地区で襲撃を受けた。2mもの光を映さない剣を所持。「騒がしき剣」「中指」「蜂の娘(=恐らくルインだろう)」
・(コール)闘技場で襲撃を受けた。殺人集団、レッドポイント…10年前の事件と関連性、あり? 遊びで襲撃?
・(マクナーリア)コールと同じく、闘技場で襲撃を受けた。殺人、快楽、主義? セシリアを襲撃? 名前を知られて喜んでいたという。早口。

※外見の特徴の証言は、基本的に「黒づくめ」「赤(目)」「変な声」と大方共通している。


――――――


9/7

今までの合わせて。情報はこんなもんか。今回の話からするに、きっと、コールもマクナーリアもイザヨイも、みんな「マーシレス」に襲撃を受けたのだろう。

正直、場所の選択は間違っていたかと思っていた。
近郊の森――表でも、裏でもなく、人気もない場所。逃げようと思えば逃げられるし、罠も仕掛けられやすいような鬱蒼とした空間。誰かに見られる可能性も低いだろうと踏んで、だ。そして、裏通りで賞金首と話す方がリスクがあるようにも思えた。たとえば、話の途中で、マーシレス本人の登場、ゴロツキか誰かが襲い掛かる……そんな可能性もあるかもしれない。こちら側は身分を隠さなくては行けない、そんな手間もある。だから。
ルインもそれで承諾してくれた。けれど、返事の手紙に書いてあった文章が、妙に気になって。……蜂の獣人。多くの蜂も従えている。そして、自然の多い森。 …失敗したと思った。
もし戦闘が起こった時、ルインの方が有利に、なる。

決行の時間帯も夜。聴取しても明かりがないと文字は書けない。カンテラを買いに夕方商店街へ。
蜂が、飛んでいた。奇妙なまでに整列する蜂達。オレの周りを、回って行った。
その行動が何かを示しているかのようで……更に、不安になった。選択は確実に誤った気が、した。
けれど、変えようもない。臨機応変に実行するまでだ。
蜂の対策に、属性球も買い込んで。
詰め所まで戻れば、ヴァイスと一緒に森の奥にある泉へ。

流石ヴァイス。準備が良い。
予め、木に沢山伝え石を付けて、位置把握も出来るようにしてくれていた。
そして、隊長の教えも、改めて確認させてくれた。 …一歩寄り添うだけ。全ては飲み込まず。揺さぶりを。

指定の時間、場所で待っていれば。蜂が紙を運んでくる。最初は、文通から。
ヴァイスも来るとは、告げていなかった。それに対する問いが、向けられる。
声の聞こえる位置……そう遠くないところに、ルインはいるようだった。
交渉の基本。言い訳がましくは、したくなかった。それこそ、飲み込むという行為にしかならない。あいつが納得しない。
何かヴァイスが蜂の歌を歌いながら待っていたような気もするが。
賞金首との対話だ。何が起こるかなんて、わからない。その為にも、隊長はヴァイスをオレの護衛と支援に命じた。そこから返答を引き出して。
ルインも、同じく警戒はしていただろうから。隠れているって事は。

女の子を誘うには良い場所、とは言ってくれたが。ヴァイスの笑みを見て、やっぱりこの選択の誤りをあいつも感じただろうかと思った。
ルインへ返答すれば、再度問い。
場所の選択理由を、説明。かなり、不安もあったが――返答を聞いたルインは、その後姿を現してくれた。
内心、ほっとした。正直、本当に自信がなかったから。 ひとまず、聴取に至るまでの説得は、成功。
使いの蜂はこれまでに良く見かけていたが、本人の姿を見るのは久しぶりだった。

聴取。
裏通りでいきなり襲われた、という状況。
マーシレスの容姿。武器。
不思議な言動。
ルインを苦戦させ、パニックを起こさせるほどの相手。
様々な事が聞き出せた。

ヤツの言動の一つであったという、「必要悪」。
悪党を襲う悪党。
……悪。
考えてみれば、いや考えなくたって。それは …
その判断基準は、どこなんだ?

…………しかし。
これまでに、オレはマーシレスの情報を得ていたのか。ルインとの接触以前に。
イザヨイ、コール、マクナーリア。もしかしたら、セシリア。罪もない、人が襲われている。襲うのは、犯罪者だけではないようだ。となれば。

犯罪者から姿を隠し明かさないのは、報復を防ぐ為でもあるだろう、とヴァイスは。
とはいえ、マーシレスは……市民にも攻撃を加えている。賞金稼ぎや冒険者と呼ぶには、どうだろう。あの交渉の時は、三人の情報が一致しているとまでは至れなかったが。またこれらも伝えておかないと。
そして裏通りの捜査は、尚更変装した方が良さそうだ。服は早いうちに用意をしなければ。

ルインのタレコミの目的。
自警を動かさせる為。マーシレスを、オレらに追わせる為。そう、一度そんな情報が来れば、動くしかない。上手く、使われたか。
何か、濁すような部分も幾つか。踏み込みには、失敗。けど、ここまでの情報を引き出せただけでも、十分、だろうか。
隊長に会っていたという。じゃあ、話は、したのかな。
また、隊長からその時の状況を伺ってみよう。

坊やだとかヴァイスはオレのお守りだとか、何だとか。子供扱いすんじゃねェっつの……。お守りはヴァイスにも同意されちまったし。護衛は確かだけどさ。
後、男の前で握りつぶす話題はやめてくれ……切実に……。食らってもいないのに痛くなる。

ヴァイスの意見は適格。オレだけじゃ、色々甘いところが多かっただろう。…助かった。
マーシレスを追って貰えるという、相手のメリットはある。こちら側、自警側の、メリットは? そんな「交渉」が始まる。
ルインも大胆な提案を言ってくれる。
抱いてあげようかって  いや、そっちじゃねェ。違ェ。ヴァイスが言ってたがほっぺにちゅーもダメだ。オレのメリットにならない。反応可愛い言うな。ヴァイスも同意するな。マジやめろ。
あの状況で冷静でいられなくなりそうになる。思ってる事表情出さないように、隙を見せないように、何とか……かなり辛い状況だった。
彼氏いますから!!! オレにはアイズがいるから!!! ルインも知ってて言ったろ……ちくしょう……
多分、ああいうの色仕掛け?っていうんだよな、うん。かわす方法を是非とも教わりたい。そもそもこんなオレに仕掛けるヤツがそうそういるとは思えないが。隊長に聞いてみる。

それはいいとして。
本命の提案は。
ルイン自身が囮になる。世相の操作もやってくれるとまで申し出た。
つまりは、オレら――自警団に協力をしてくれると。
確かにメリットはあるが。 まずは、隊長の意見待ち。
ルインが、マーシレスに殺される可能性だってある。骨の折れるほどの相手ならば。
捕らえられる可能性もある。それでも、一番生き残りやすい道だと、あいつは言った。
気に入らない相手は、始末したい……その光景は、放火事件でも見た。

強くなれたなら、やっぱり、嬉しいな。
あの事件よりも、ずっと考えは変化したと思う。あの時は、守りたい人だけ守れればそれで良かった。気に入らないヤツは、どこまでも嫌悪した。話も聞かずに毛嫌いだって、良く。そんな独りよがりだった、あの頃。
今は、そんな事は、ない。

ルイン、レミの事を知っていたようだ。ラクリモーサとの繋がりで、だろうか。ほだされかけた、とか言ってたな。
手を組める味方もいない、という。話の聞かぬ奴等ばかり、だと。
けれど、気にかけてあげられるような友人は居る―― ……オレ、なのか。ヴァイスの問いに否定はしなかった。
ウンケイ、ジル、ヴァイス、ラクリモーサ。みんな、罪を犯した人達。相対する立場。ジルは釈放されカタギの仕事をやっていて、ヴァイスは仲間になった。今は対等の立場。
相対していようとも、つい、友人のように思ってしまう。けど、これは罪ではない、だろ? 償いから逃しはしない。それを放棄はさせない。ルインも同様。もし、これから、どんなに情を抱く事になったとしても  

場所の選択は、間違っていなかったようだ。
ヴァイスも、ここで良かったと言ってくれて、安心した。
ルインとも交渉決裂や、戦闘はなく。誘拐された、というのは、どうにも気になったが――
無事に、終わった。本当、すっごく疲れた。
ベルナートが通信を担当していた様子。相も変わらず賑やかな声だ。


【商店街:蜂  森の奥の泉:ヴァイス、ルイン】

9/6

いよいよ明日。
裏庭で素振りをしていれば、雨が降ってきた。中断して室内へ戻ると、聞き覚えのある声三つ。
コールとマクナーリアとバイツァ。バイツァは確かー……伏竜隊、だったか? 所属。
バイツァがお茶飲むか?っつーから烏龍茶を頼んだらハーブティーが来た。どういう事だ…!
何も、実家から大量に送られてきたらしい。いや、良いんだが。たまには紅茶も悪くない。
何かイケメンとか結婚とか言ってた。そして急展開だ。
マクナーリアがバイツァの事が好きだと告白した。
……マジか。バイツァの事が。ま、まじか。
そして当の本人、茶ァ噴くわ、酒イッキしてぶっ倒れるわ、傘のないマクナーリアに貸そうとして何故かバートレット隊長のを持ってくるわ、何か叫ぶわ、早退の途中でリバースするわ……落ち着け。落ち着けバイツァ。切実に思った。

コールは調べ物をしていたようだ。10年くらい前の事件、謎の殺人集団。そんな事件も、あったか。
どうにも、資料を見ても手掛かりはないようだ。情報の少なさ、というのは不便だ。
闘技場で黒づくめで赤目な野郎に襲われたらしい。その相手は手合わせ、ではなく、遊びで。
マクナーリアも襲われたらしいが、二人とも怪我はなかったようだ。
アズもコールからその話を聞いて、そいつを追っているらしい。
……もしかして、コールもオレらの捜査を、知ってる? や、アズから聞いたのかもしれないな。結局、聞けずじまい。
マクナーリアから得た情報は、早口で妙な声。コールが言っていたという「無情」……いきなり襲い掛かるような相手を無情だって言いたくなるよな。名前は、わからない。
ルインやセシリアが襲われた? 名前しか出てこなかったみたいだからオレの知る人かは、わからないが。
ルインとは明日会う。出来るならば、確認してみるか。
しかし……何か、前にも似たようなの聞いたような、聞いていないような……

ベルナートに襲われた。…いや、正確には泣きつかれたんだが。隊長が鬼だーっとか言ってた。
まァ、自業自得だろう。エロ本隠しとサボり魔じゃァな。因果応報ってヤツだ。
今は通信士、ヴァイスのところにも付いている、とは、聞いてはいたが、何だかんだでちゃんと顔を合わせたのは初めてだったか。
煮干しとカツオとサバとトリとササミと魚肉ソーセージが好きっぽい。
マクナーリアが出した煮干しがコールへ、で、コールからオレへ、たらい回しな状況に。そして狙われた…!
ベルナートのジャンプ力パネェ。すっげェビビったっつの……。
突撃食らわなかったと思ったら壁に激突してた。痛そうってか痛いんだろうな……鼻血出てた。から、ティッシュ貸したらあっという間に鼻血止まった。治癒力もパネェ…。

煮干し騒ぎの中、ギガトールが落し物を届けに来てくれた。後、隊長をご飯に誘おうと探していたみたいだ。あの時は隊長、いなかったけれど。
…仲間、か。隊長のプライベートは、殆ど知らない。娘さんがいるとは聞いたけど、…仕事での付き合いばかりだ。上司と部下の関係、それが当たり前なのは解ってる。けど。 仲の良い友人のような、関係が。ちょっと羨ましくなった。
息抜きは大事だ。やっぱりたまには休息をしなきゃ。
……オレの大丈夫、は、あまり信じられていない気がするな……。アイズにも、大丈夫だつったら信じてなさそうな顔されちまったし。
疲れそう、なのは、言えてる、かもしれない。変化が大きそう、飲み込むのが下手そう、というのも。
ラゼットにピクニックの提案をしたのはギガトールだったらしい。また、行ければ良いんだけどな。聖剣エクスカリバーって何だろう。
こないだ、盗難届も取り下げられた。……ブルーとは何も、なかったのかな? それとも、女の子を取引をしたのか、……返したのか。解らないが。
会ったら確認できるか。けど、今度がオレの方がドタバタし始めちまった。結局いつ行けっかな、カレーピクニック…。

落し物の鍵は、どうやらマクナーリアの物だったようだ。家を買って、今はリコスと一緒に住んでいるって。リコスは冒険者を辞めて、学院生になったのだとか。
学べるのは教科だけじゃないからな。色んな事、学べる場だ。
ジルは、入ったのだろうか。親父さんもそろそろ退院したかな。

えーと、マクナーリアが言っていたルインを襲ったと発言したヤツとマーシレスが同一人物だった場合は、100G魚肉ソーセージ奢る、と……
何かいつのまにか賭け事っぽくなってぞ……
しっかしサボり一時間ってどういう事だ、あんにゃろー…! オレもあまり人の事言えない気もすっけど! 休憩にしては長いし!
ごわごわさんのげんこつ避けられるのか……
兎にも角にも。

明日。


【コール、バイツァ、マクナーリア、猫の自警団員、ギガトール】

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